スポーツで更なるパフォーマンスを上げるメンタルトレーニング法とは?

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メンタルトレーニングのひとつ集中力

試合で最高のパフォーマンスを発揮するためには肉体のトレーニングが必要であることはもちろんのこと、その成果を常に発揮するためには、メンタルトレーニングがとても大切だと言われています。

いかにいつもの自分でいることができるか、自分の才能を出し切ることができるか、それはスポーツをする人ならば誰もが知りたいところです。

  • 競技スポーツを行っているが、パフォーマンスが伸び悩んでいる人
  • 試合になるといつも緊張してしまいなかなか結果が出せない人
  • 4年後の東京オリンピックにむけパフォーマンスアップを考えている人
  • 子供のさらなる活躍を期待する親御さん

そのような方は、現在のトレーニングの限界を感じ、メンタルトレーニング面の重要性を意識されてきたのではないでしょうか。

スポーツにおけるメンタルトレーニングの重要性は確かに何年も研究されてきました。有名選手なども積極的に取り入れ、大きなパフォーマンス向上につなげています。

この記事では、そういった従来のメンタルトレーニングに加え、新たな視点からのトレーニング方法もお伝えしてますので、ぜひ最後までご一読ください。

1.メンタルトレーニングとは?

イチロー選手の言葉に「肉体のストレスなんか大したことないんです。要はメンタルのストレスで疲れは決まる。」という名言があります。

肉体のトレーニングが必要なことはもちろん間違いないですが、それ以上にメンタルトレーニングが重要ですと言っているのではないでしょうか。

実際、トレーニングによる肉体の疲労は時間の経過により必ず回復するし、逆にその疲労は次のパワーを生み出す源ともなり、プラスに働きます。

しかし、心の変化による肉体への影響は、全身を硬直または弛緩させてコントロール不能に陥らせることもあります。

そして、そのストレスがまた心に身体に影響を与えるという悪循環に陥り、どんどんマイナスに働いてしまうのです。

メンタルが乱れると悪循環に陥る

メンタルトレーニングとは、「心の変化による身体への影響をできるだけ少なくして、平常心で普段の力をいかに発揮することができるようにする」というトレーニング方法です。

過酷なトレーニングが当たり前になっているトップアスリートにとっては、メンタルトレーニングがいかに大切かということをイチロー選手は教えてくれているのです。

誰もがトップアスリートになれるわけではありませんが、少しでも彼らに近づくためには、メンタルトレーニングによって、いかに過酷な肉体のトレーニングによる成果をより向上できるか、ということにもっと注目するべきなのです。

2.メンタルトレーニングの歴史と日本での普及

今から約60年前、オリンピックでのメダル獲得を目的としたメンタル強化が旧ソビエトで始まり、1976年のモントリオールオリンピックを境に、メンタルトレーニングは世界へと広がっていきました。

実は日本でも、1964年の東京オリンピックより前に、心理学を応用したメンタル強化を試みていましたが、日本人の気質には合わなかったようで普及にはいたりませんでした

この頃の日本は、根性論が主流であり、「心技体」のうち体力の強化に力を入れることで、ある程度の結果を出せていたようです。

日本のスポーツ界は根性主義といわれている時代でもありました。

その後、各国で研究が盛んになり、1984年、ロサンゼルスオリンピックでメンタルトレーニングを取り入れたアメリカが好成績をおさめ、それ以降日本でもメンタルトレーニングが注目されるようになります。

メンタルトレーニングとオリンピック

日本オリンピック協会によって、普及に向けてのプロジェクトを立ち上げ、スポーツ選手のメンタルマネジメント研究が始まりましたが、やはりなかなかスポーツ界からは受け入れられない状況が続いていました。

しかし、その後、数々のオリンピックで、世界各国のオリンピックチームがメンタルトレーニングの活用で成果をあげたことから、日本でもようやくメンタルトレーニングの重要性が理解されるようになりました。

それでもなお、まだまだ世界で通用しているポジティブシンキングが主体のメンタルトレーニングは、日本人の気質にはなかなか合わないようで、結果が伴っていないというのが現状ではないでしょうか。

何か違う形のメンタルトレーニングが求められているのだと感じます。

3.著名なアスリートのメンタルトレーニング方法

3−1錦織圭

錦織選手にはメンタルコーチの元全仏王者のマイケル・チャンさんがいます。

錦織選手は、フェデラーは自分の憧れであったと言っていました。

しかしチャンさんはこう言います。

「ロジャー(フェデラー)は史上最強の王者だが、コートで戦うとき、尊敬は邪魔でしかない。テニスで世界のトップに近づくほど、メンタル面が勝負を分けることを圭は理解しないといけない。4大大会で準決勝、決勝にいっても当然と思え。」

朝日新聞デジタル

自分の考え方・捉え方でプレーが変わるということですね。

憧れは憧れでしかない。コートで相対したときにその気持ちは勝者のメンタルには必要ない。

試合本番で実力を100%発揮することの手助けとなるのは、やはりこういったメンタリティだったということですね。

錦織選手がメンタルトレーニングに取り組んだ結果は、もうご存知のとおり大活躍をしています。

http://365topics.com/270.htmlより引用

つまり錦織選手のメンタルトレーニングは典型的なポジティブシンキングです。

自分自身の言葉で強い自分を作り上げることです。

テニスとメンタル

しかし、実際には彼は大切なところでメンタルの弱さを露呈しています。

大きな大会の決勝ではなかなか勝つことができなかったり、大切な試合で体のトラブルによる棄権も少なくありません。この身体のトラブルも、もとはと言えば心の変化による身体への影響が原因だと思われます。

3−2五郎丸歩

五郎丸選手は、皆さんもご存知の通りあの「五郎丸ポーズ」のルーティーンによって心の動きを抑えていると言われていますが、以下、ラグビー日本代表メンタルコーチをされていた荒木香織さんのブログからの抜粋です。

最近は、五郎丸選手のプレ・パフォーマンス・ルーティーンについての取材を受けることが多く毎日2回くらい誰かに説明をしています。

ただ、メディアに出ていくときには編集がされるため真意が伝わらないことが多いのが残念です。よって、ここにもう一度書き留めておこうと思います。

まず、「お祈りポーズ」「五郎丸ポーズ」と命名されていますが、あのポーズには全く意味はありません。

あのポーズをしても精神統一はできません。あのポーズをしてもキックは成功しません。くれぐれも誤解のないようにお願いします。

今日は「じゃあ、あれが正座でもいいってことですかっ!?」と意味の分からない質問をされました

まあ、プレ・パフォーマンス・ルーティーンにあのような姿勢で静止することが含まれなくても構いません。

もっと短くても、長くても本人がキックの準備が出来れば問題はありませんし、成功率とも関係しません。

プレ・パフォーマンス・ルーティーンはパフォーマンスの前(プレ)に行うルーティーンです。

五郎丸選手の場合はペナルティーキックやコンバージョンキックの前に行います。

ポスト・パフォーマンス・ルーティーンはパフォーマンスの後(ポスト)に行うルーティーンです。

テニスのボレーを失敗した後に、もう一度素振りをして成功のイメージをして終わるような動作です。

よって、ルーティーン=決めごと・ゲン担ぎといった誤解のないようにしてください。

 

基本的にプレ・パフォーマンス・ルーティーンは、

1.止まっているボールへアプローチすること

2.制限時間がなく自分で時間をコントロールできること

などの条件のもとに行います。

イチロー選手の例が良く挙げられますが、どちらかと言えばピッチャーの方がプレ・パフォーマンス・ルーティーンの条件に当てはまります。

そのほかの例としては、バレーボールのサーブ、ゴルフのファーストショットなどです。

効果としては大きく4つあります。

1.何度も動作を練習することにより、それに続くプレー(五郎丸選手の場合はキック)をスムーズに行うことができる。

2.動作に集中することにより外的(歓声・相手の動き)及び内的(不安・心配)な障害を取り除くことができる。

3.動作をおこなうことによりストレスの軽減につながる。

4.動作を通じて、それに続くプレーのリハーサルをするため、プレーの修正をすることができる。(キックをミスしたら、次のキックの成功のため動作の途中で調整をする)。

単に「プレッシャーを取り除く」や「精神統一」、そして「集中できる」と表現されることが多いですが、どれも当てはまりませんので気を付けてください。

なぜなら、プレッシャーを取り除き、精神統一をして集中すればキックの成功につながると端的に捉えられている感じがあるからです。

-プレッシャーを取り除くトレーニングは別です。

-精神統一の意味があやふやですから、気を付けないと「落ち着く」などの意味合いがあるとすれば、落ち着いていてはできないプレーもあるので・・・

-集中は上記の2と関係しますが、プレ・パフォーマンス・ルーティーンに「集中」できるように、トレーニングをしますので、キックに集中できるようになるわけではありません。

 

最後にキックが成功したか否かといった結果と照らし合わせることはしません。

あくまでも、プレ・パフォーマンス・ルーティーンとして決めた動作を遂行することができたかどうかを評価しながら完成を目指します。

なぜなら、プレ・パフォーマンス・ルーティーンはパフォーマンスの強化・向上に影響するとスポーツ心理学で明確にされているためです。

 

以上思いつく限り書き出してみました。

また、機会を見つけて補足をしていきたいとは思います。

最後に、プレ・パフォーマンス・ルーティーンはメンタルのスキルのほんの一部です。

選手の状態や状況に合わせた様々なスキルが存在しますよ

荒木香織でした

引用元:http://blog.goo.ne.jp/univ-hyogo-sportpsych

ということだそうです。

あのポーズをしたから集中力が高まりキックの成功率が上がるのではなく、あのポーズをするために集中力を高める、つまりあのポーズに集中するためのメンタルトレーニングをしているようです。

ラグビーとメンタル

わかるような、わからないような…

ただ、あのポーズを邪魔されたり阻止されたりすれば、キックの成功率が下がるのは確かだと思います。

ルーティーンがうまくいかなければ、パフォーマンスが下がってしまうでしょう。やはりルーティーンによって集中力を高めているのだと思うのですが…。

ただし、ルーティーンに頼りすぎてはいけません。

常に自分のペースでルーティーンができるとは限りませんから、邪魔されればたちまちイラついたり、本来の自分ではなくなってしまいます。

例えばゴルフのティーショットでのルーティーン中、声がしたり、カメラのシャッター音がしただけで、プロゴルファーはルーティーンを中断し、少しイラつきながら最初からやり直す、という光景を幾度となく見たことがあります。

仕切り直し、というやつでしょうか。

これは明らかにルーティーンのための集中力ではなく、集中力のためのルーティーンです。

わかるような、わからないような…

結局、見えないものをコントロールするメンタルトレーニングは、本当にわかりにくいものなのです。

正解がなければ、間違いもない。

結局は、心に左右されない身体作りができればいいのです。

それにはまず心に左右される身体を見える形で確認できれば解決していけるのではないでしょうか。

3−3イチロー

イチロー選手もまたルーティーンを大切にする人です。

彼の場合はプレー中やプレー前後だけではなく、朝起きた時からルーティーンが始まるそうです。それは、毎日同じ事を繰り返していると、いつもと少しでも違う感覚があればすぐに体の変調に気がつくことができます。

イチロー選手は実は精神力が強いわけではなく、むしろ繊細なのです。

だからイチロー選手は、できる限りプレッシャーや焦りにつながるようなことをしないし、見ないし、聞かないそうです。

例えば、スポーツ新聞を絶対に読まないそうです。

誰だっていい記事はテンションが上がりますが、悪いことを書かれてしまうとプレッシャーを感じてしまいます。

またイチロー選手は変動する打率を意識せずに、積み重ねることができ、減ることのない安打数を意識しているとのことです。

また練習も同じように始めて同じようにこなしていくそうです。

このようにできる限り心の影響による身体の変化を受けないようにして、またルーティーンを大切にすることでその変化を自覚し、即座に対応出来る自分自身を作り出しているのです。

野球とメンタル

自分自身の弱い部分を自覚し、その時にどう対処すればいいのかということを知るというトレーニング。これがイチロー選手のメンタルトレーニングなのだと思います。

心はできるだけポジティブに、ここまでは一般的なメンタルトレーニングと同じですが、もし心の影響によって身体が変化した場合、それに対応して身体に対してアプローチができれば、誰もがイチロー選手のような精神でトップアスリートを目指すことができたり、また生活の中でこのメンタルトレーニングを生かすことができたりするのです。

4.メンタルトレーニングの方法

4 – 1 心理的アプローチではなく身体的なアプローチ

一般的なメンタルトレーニングの方法は「アスリートが行っているメンタルトレーニング。実生活への応用も可能なんです!」でも紹介していますのでそちらも御覧ください。

しかし、この記事ではさらにその上をいくメンタルトレーニング法を紹介します。

メンタルトレーニングの基本はポジティブシンキング。

ネガティブになった時に身体の動きが悪くなることを避けるために、いかにポジティブな自分でいられるか、ネガティブにならないようにするにはどうすればいいのか、というような、主に心理的なアプローチが中心となります。

しかしこの「前向き」とか「冷静」とかが緊張した時には難しいので、結果的になかなか結果と繋がらないということになるわけです。

だからイチロー選手はそうならないように自分にとってのネガティブ情報をシャットアウトするような生活をしているし、またそうなる前に自分自身の変化を感じ取れるように、生活そのものをルーティーン化しているのです。

「いつもの同じ環境でいつもの同じ自分自身」に少しでも変化があれば、その変化に対しても対応できるような自分作りをしているのです。

 

ポイントは、その「身体の変化に対する対応」というところです。

身体の変化に気づく

本当のところイチロー選手が何をどうしているのかはわかりませんが、一流でかつ故障トラブルの少ないトップアスリートたちの多くは、“これ”を特に意識することなくこなしているのだと思います。

4 – 2 心の変化に影響されなくなる身体的アプローチ

4 – 2 – 1 「知る」〜身体の変化に気づくこと〜

人は心の変化にはすぐに気付きますが、身体の変化にはなかなか気づきません。悲しいのに悲しいのかどうかわからないということはまずありませんが、「右足の筋力が、今少し落ちた。」などということは、一般的にはわかりません。

アスリートをはじめとする身体を動かすことが仕事という人の中には、その変化を微妙に感じ取れるかもしれませんが、普通の生活の中でその変化を感じ取るということは極めて難しいのです。

しかし、心の変化や環境の変化、見るもの聞くものすべてが影響して、身体は常に変化しているということをまず知っておいてください。

ある一瞬でスイッチが切れるように力が入らなくなったりすることも実際にあるということも知っておくと、そのような時の対処が出来るようになります。

4 – 2 – 2 「聞く」〜身体の変化をリセットする〜

緊張などによるちょっとした心の変化で、身体はその瞬間に大きく変化します。

しかし、その変化も元はと言えば間違いなく自分自身がしていることです。

その変化は、その人の脳が身体をコントロールした結果なのです。

それを理解してあげるだけで、逆にいい方向にコントロールすることが可能になるのです。

そんなことができるはずがない、と思われているでしょう。

それが簡単にできるのです。

緊張によって身体の動きが悪くなったり、弱気になって意欲がなくなりそうな時には、実際に筋力が落ちています。身体の一部の筋力が落ちただけでも、全体のバランスが悪くなり動きは悪くなります。またその身体を支えるために無駄な力が必要になり、本当に力を入れたいところに力が入らなくなったりします。

“バランスの悪い身体で高いパフォーマンスは望めません。”

バランスが崩れている状態で動きすぎれば身体が致命的なダメージを受けかねないですから、その時に脳は次のように体に指示を出しているのです。

しんどいと感じさせたり、意欲を無くさせたり、部分的に違和感を感じさせたり、痛みを感じさせたり。

これらの症状はすべてバランスが悪くなっている身体からのお知らせのようなものです。

そのお知らせをよく聞くというシンプルなことをなかなか人はできません。

まずは、意識して、そのお知らせを聞いてください。

そのお知らせが来ているときは、体のバランスが崩れているのです。

4 – 2 – 3 「応える」〜身体を山折りにする〜

身体からのお知らせは、言い換えればカラダの声。

カラダの声が聞こえたら、つまり身体に何かを感じたらとにかく「これ」をしてみてください。

ニューロアウェアネスではそれを「山折り」と呼んでいます。

人はネガティブになったり、緊張したりするとその影響として筋力を低下させてしまいます。

全身を支えている筋肉が弱くなることで、身体は次第に前のめりになり、その身体を無理に支えようとしたり、スポーツの動作として無理に使おうとすれば、その自覚はなくても無駄に力を入れなくてはならず、いいパフォーマンスを得ることができません。

無意識に頑張る

まさしくその状態を「力み」と言いますが、またさらにその身体を支えるために緊張の度合いは増し、連動して身体のパフォーマンスもどんどん落ちてしまいます。

身体に何かを感じた時、つまりカラダの声が聞こえた時には、無意識に任せっぱなしにして力むのではなく、意識的に身体を「山折り」にするのです。

背中を谷折りにする

具体的な「山折り」は非常に簡単ですので、ぜひ、下記を参考に自分で行ってみてください。

「自律神経を鍛える!?そのおかしな誤解と解消法を3つご紹介。の中の3.体のバランスを整える

 

「山折り」を実際にしなくてもその意識を持つだけでも瞬時にパフォーマンスが上がります。

ただし、試合の途中で「山折り」なんてしてられませんから、通常の生活の中で山折りを意識してみてください。

すると、試合前や試合の途中でカラダの声が聞こえた時に、「山折り!」と意識するだけでも不思議と身体にスイッチが入るのです。

「山折り健康法」の詳細は「Brain’s Consensus Communications」でも詳しく紹介しています。

5 メンタルトレーニングで怪我を防止する

5 – 1 怪我の原因にもメンタルが関与している

激しいトレーニングを積み重ねたトップアスリートでさえ、練習中または競技や試合中に筋肉や関節の違和感を感じたり肉離れなどを起こしたりします。

試合中の怪我

これらもふとした気持ちの変化や苛立ち、そして緊張などの影響で身体のバランスが乱れることが原因であることが多いです。

また「いつも同じ部分を痛めてしまう」、「調子のいい時と悪い時との差が激しい」というようなことも、心理的なものからくる肉体的な変化が原因です。

逆に言えば、これらのトラブルはメンタルトレーニングで事前に防止することも可能なのです。

身体のバランスの乱れや肉体的な変化を起こさないように、また変化を起こしそうな時にその変化をすぐさまリセットできるように、身体のことを知っておけばいいのです。

怪我の少ないイチロー選手はこれができる人なのでしょう。

5 – 2 怪我の予防法

柔道やラグビーなど相手との接触があるいわゆるコンタクトスポーツ。激突や過大な負荷などが原因での怪我は突発的なものですので防ぐことはできません。

体の限界

しかし、自分自身の動きの中だけで感じる違和感や痛みに関しては、心理的な要因も考えられますから、それを知り、聞き、応えることができれば、それらの怪我は防ぐことができます。

5 – 2 – 1 知る

身体の違和感や痛みには、大きく分けて二つのパターンがあります。

ひとつめは頑張り過ぎているために違和感を感じたり痛みを感じたりするパターン。

もうひとつは筋肉が稼働していないのに無理やり使おうとした時に感じる違和感や痛みです。

自分が今感じている痛みがどちらの部類に入るのかをまずは知ってください。

原因不明な膝の痛み

5 – 2 – 2 聞く

頑張りすぎている部分の違和感や痛みは、その部分が支える必要があって筋肉を緊張させすぎているために感じます。つまりその違和感や痛みは「他の部分がサボっている」ということにより起こっているのです。

それを知らせてくれているカラダの声。その声を聞かなければ、さらにお知らせは大きな声となり、違和感から痛み、そして激痛に変わっていきます。

また筋肉が稼働していない部分には、日頃からむくみやしびれなどを感じている場合が多いです。

そういった違和感や痛みも身体が発している声です。

その声を聞かずにそのまま無理をしてしまうと、肉離れや疲労骨折などを起こしてしまいます。

5 – 2 – 3 応える

「他の部分がサボっていますよ」という声に応えるにはどうするか?

これは、非常に簡単です。サボっている部分を刺激すればいいのです。

例えば右の腕に張りや痛みを感じたら、左の方や腕を刺激しながら動かします。腰に張りや痛みを感じたら両方の足首を回したり、肩甲骨を回したりしてみます。手の指に違和感を感じたら、肘や肩を刺激して回します。

この考え方は、おそらくこれまでの身体に対する意識とはまるっきり反対だと思います。

痛みや症状がある部分に対して何かをするということが改善の方向だと疑うこともなかったと思います。

しかし、それではカラダの声には応えられていません。逆にカラダの声を消そうとしていたのです。

サボっているということは、筋肉のスイッチがまだ入っていないということです。

そのため、「スイッチ入れてから動いてください」という声をあなたの身体はあげているのです。

このスイッチを入れるというシンプルな行為なのですが、これがなかなか難しいので説明しますね。

 

家電やパソコン、スマホなど電気の力で動く機械類には主電源があります。

スイッチ

また実際に使う時に入れるスイッチもあります。主電源がオフの状態ではもちろん使うことはできませんが、使用スイッチがオフになっていても、やはり使うことはできません。

人間はどうでしょう。

生きている以上主電源はみなさん入っています。

しかし、実際に身体を動かすためにスイッチを入れなければならないのです。

スイッチ、入れてますか?おそらく、意識してスイッチを入れている人はいないと思います。

多くの人がこのスイッチを入れずに身体を使おうとして、身体からのストップをかけられてしまうのです。

 

その時のカラダの声が違和感やしびれ、倦怠感、そしてイップスもスイッチオフの時のカラダの声です。

※イップス:精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、自分の思い通りのプレーができなくなる運動障害のこと

 

では、スイッチを入れるにはどうすればいいのでしょうか。

一番大事なことは、まずは、スイッチがオフ状態であるということを自覚することです。

多くの場合、その自覚がなくそのままトレーニングを続け、試合に出ることがあります。

そして、その結果いい成績を出せずに自信をなくしてしまったり、怪我をして戦線離脱をしてしまったり、ということが現実によくあるのです。

また、身体の調子が悪いのは運動不足が原因だと言われて、運動を始めました。

しかし、身体の調子も良くならない上に、運動をすることが嫌になってしまった、身体にさらなるトラブルを抱えてしまった、なんてことも経験があるのではないですか?

スイッチが入っていないのですから、使ってはいけないのです。

パソコンやスマホなら主電源が入っていて待機電流が流れていても、真っ暗な画面のままで使おうと思わないでしょう。

しかし、人間は主電源さえ入っていれば、無理をして動いてしまうのです。

そんなことをすれば、ストップがかかっても当たり前だということがわかりますよね。

 

まずは、知って、聞いて、応えてください。

 

6.カラダの声に応える具体的な方法

実際のところ冷静にカラダの声を聞けるようになるには、経験や時間は必要ありません。

「あっ、そういうことなんだ!」という気づきだけです。

身体の変化に気づく

わかってしまえば、それが間違いなく当たり前になるようなことです。

天性的にそれを当たり前だと思っている人は、メンタルに強く、怪我も少なく、安定して結果を残せるような人です。

身体のことを知り、カラダの声を聞き、それに応えるということを無意識にしているのです。

では、それを意識的にしてしまいましょう。

それがバランスを整える、ということです。

筋肉が頑張っていたりサボっていたり、スイッチが入っていない部分があったり、これはすべて身体のバランスが悪い結果です。

つまり、カラダの声に応えるには、身体のバランスを整えればいいのです。

身体のバランスを整える方法は下記で画像付きで詳しく説明していますのでぜひ御覧ください。

 

7.まとめ

スポーツ全般に言えることですが、練習でできたことが本番でできるとは限りません。本番で100%の力を発揮できるように、心を100%の状態に持っていくことが大切。

しかし、それが難しいのです。だからこそこの記事にたどり着いたのでしょう。

「平常心を保っていたつもりだけど、思い通りに飛べなかったのは自分のメンタルの弱さ。もっともっと強くなりたい。」これはソチオリンピックでメダルを逃してしまった、

女子スキージャンプの絶対王者と期待されていた高梨沙羅選手の言葉です。もちろんオリンピックに向けてのメンタルトレーニングもしていたでしょう。しかし、結果は出せなかった。

心技体、いくら技術と体力があったとしても心が伴わなければ結果を残すことはできません。彼女の一番の敵は「緊張」だったのです。

どのスポーツにも言えることですが、日本のスポーツに対する考えは、技と体に頼りすぎています。

メンタルトレーニングという「緊張のない平常心を保つ」という考えはおおらかな欧米人にはプラスになっても、繊細で緊張しやすい日本人にはあまりプラスにならないというひともいます。

そして、実際にあまりプラスにはなっていないようです。

それならば平常心を保つことよりも、緊張しても影響されない身体を作りましょう。これが繊細な私たち日本人に向いている、最高のメンタルトレーニングなのです。

心を動かそうとせず、身体を動かす。

そのために身体のことを知り、カラダの声を聞き、そしてそれに応える。

シンプルですが奥が深く、そしてスポーツだけにとどまらず生活の上でも非常に役に立つトレーニングの1つです。

 

「痛みが和らいだ!」「いい情報だった!」と思われた方は、
ぜひご友人やご家族にも教えてあげてください。

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