かかりつけのお医者さんから紹介されたペインクリニック。
病院ではとれない痛みがとれるという痛み専門の診療所。
だけど、どんな治療をしているのか、本当に痛みがとれるのか、そもそも痛くないのかよくわからないから不安ですよね。
でも、ペインクリニックでの治療を我慢すればその痛みはなくなるかもしれません。ただし自分の身体に対する知識を少し勉強しておく必要があります。
この記事では、ペインクリニックの概要と、効率よく治療を受けるための予備知識を説明します。
※2016年5月23公開 2018年7月30日更新
目次
1 ペインクリニックとは?
ペインクリニックとは、痛みをとりのぞくことを専門とする診療所です。
麻酔科の医師が神経ブロック注射という方法で痛みを緩和する治療を行います。※神経ブロック注射については後ほどご説明します。
1) ペインクリニックへ行くには?
検索サイトで「ペインクリニック 〇〇(地域)」で調べれば、あなたの地域のペインクリニックを知ることができますが、まずはかかりつけのお医者さんに紹介状を書いてもらうのがいいでしょう。
また、大学病院や総合病院の麻酔科に併設してペインクリニック科があります。こちらは多くの場合、紹介状が必要ですので、やはりかかりつけのお医者さんにまず相談してみることが必要になります。
そもそも患者さんが抱えている基礎疾患の情報があるのとないのとでは、実際の治療への取り掛かりが違いますので、まずは紹介状を書いてもらうようにしましょう。
2) ペインクリニックで対応できる症状とは?
以下のような痛みや症状のうち、慢性的でなかなか治らない痛みや、原因のはっきりしない痛みなど、また生活に支障がでるような強い痛みが対象です。
顔 | ・顔の痛み(三叉神経痛)・顔の麻痺まひ(顔面神経麻痺まひ)・眼の奥の痛み ・眼の周りの痙攣けいれん |
口 | ・舌の痛み ・あごの痛み |
頭、肩周り | ・頭痛 ・偏頭痛 ・首の痛み ・肩の痛み、こり ・五十肩 |
腕、手 | ・手の痛み ・腕が上がらない ・肘の痛み ・手の力が入りにくい |
腰、背中 | ・腰が痛い ・腰が重い ・背中の痛み ・肋骨の痛み |
足 | ・歩くと足が痛い ・歩くと足が重い ・階段の上下がつらい ・足がしびれる ・足の痛み ・ひざの痛み |
その他、病気 | ・癌がんの痛み ・手術後の痛み ・帯状疱疹の痛み ・自律神経失調症 ・更年期 |
3) 神経ブロック療法とは?
神経ブロック療法とは、神経や神経の周りに、歯の治療の時に使うものと同じような局所麻酔薬を注射して、痛みの伝わる経路をブロックすることで、痛みをとりのぞく方法です。
痛みが和らぐことで、自律神経のバランスが正常化され、血流がよくなったり、強い筋肉の緊張もなくなります。
ただ、一回で痛みが完治するものではなく、薬物療法と併せて複数回実施するのが一般的です。
神経ブロック療法にもいくつか種類があり、痛みの種類や部位、症状により使い分けます。
主なものは以下の通りです。
①星状神経節ブロック
頚部にある星状神経節(交感神経の中継点)に局所麻酔薬を注入。
首の交感神経を一時的に麻痺させることで、頭・顔・首・腕・胸部など局所の痛みを和らげるだけでなく、自律神経のバランスを正して自然治癒力を高めるので、花粉症、自律神経系症状にも有効です。
②硬膜外ブロック
背中から硬膜外腔(脳から背中につながる神経の束である脊髄を包んでいる硬膜の外側の空間)に局所麻酔薬を注入する治療法。
頚部・胸部・腰部や上肢・下肢の強い痛みに有効です。
③トリガーポイント注射などの各種末梢神経ブロック
痛みのある部位の比較的浅い神経に局所麻酔薬を注射します。
4) ペインクリニックで行うその他の治療法
神経ブロック注射以外の方法は、一般の病院や治療院と同じような処置になります。
ペインクリニックで行っている治療法だからといって何か特別ということではありません。
これまでやって効果がなかった治療法をくりかえすことは避けたいため、予め治療の方針は確認しましょう
① 薬物療法
神経ブロック療法の補助的手段として、または神経ブロック療法を行う程でない痛みや症状には薬物療法を実施します。また注射の苦手な人には薬物療法を行います。
鎮痛剤で痛みを抑える治療は、根本的な原因が改善して痛みがなくなるわけではありませんが、QOL(クオリティーオブライフ)を高めるたに必要かどうかを判断する必要があります。
② 理学療法・リハビリテーション
慢性の痛みのための不快な感覚や運動機能障害に対して、整形外科と同じように理学療法やリハビリテーションの手法を用いて、症状の緩和、運動域の改善をおこないます。
痛くて動かしていなければ、やはり動かすためにはそれなりの改善策が必要にはなります。しかし、あえてペインクリニックに行く必要があるのか、これも判断が必要です。
③ 手技療法
器械や道具、鍼、灸などを一切使わず、施術者の手により筋肉のこりをほぐすように促す療法のことです。緊張をとり除き、筋肉や関節の動きを調整することで、体の痛みや不快感を緩和させます。
理学療法、リハビリと同じく整形外科や治療院でも行っています。
また、筋肉の収縮自体がその身体を支えることに必要だということもあり、その筋肉のこりはほぐしてもいいのか、ほぐしてはいけない状態なのか、判断できる医師の診断が必要です。
④ 心療内科
身体の反応である痛みは、心の変化によって実際に変化します。嬉しい時には痛みを感じなかったり、またその逆もあったり。
だから痛みのコントロールは、心へのアプローチが大切だとされています。
しかし、実際に痛みが出ているのは体。
正確には心の変化によって、体が変化して、体の変化の結果痛みも変化するということです。
心の変化を捉えることは大変難しいことであり、心からのアプローチが有効な人は限られます。
5)ペインクリニックでかかる費用
基本的には保険診療が適用されます。
痛みの部位、状態により神経ブロックの方法も異なり、治療費も変わりますが、
初診時
1割負担の方:1500円〜2200円
3割負担の方:4500円〜6500円
再診時
1割負担の方:400円〜1000円
3割負担の方:1200円〜3000円 が目安です。
初診時は、レントゲン撮影費と神経ブロック術前検査(採血)などのため、その分費用が高めになります。
2 ペインクリニックのメリットとデメリット
そもそもペインクリニックは痛みを抑える治療をするのがメインであって、痛みの根本的な原因である病気を完治させるのがメインではありません。
痛みに悩まされてとにかく痛みを取りたい、この痛みのために病気の治療にも専念できないという人にとってペインクリニックは必要です。
しかし、そのような場合も、ペインクリニックの役割だけはしっかり把握した上で受診しましょう。そのためにはペインクリニックのメリットとデメリットを知っておきましょう。
1)ペインクリニックのメリット
① 身体にプラスの反応が起きる
ペインクリニックで行う神経ブロック注射は、痛みの原因となる神経線維に対し、直接局所麻酔薬を浸透させることで、神経そのものの機能を一時的に麻痺させて、痛みの伝達をブロックするということです。神経を麻痺させることで、確実に一定時間は痛みから解放されます。
使用される麻酔薬は主に歯科治療の時などに使うものと同じもので、麻酔の効果は長くても2〜3時間ぐらいですが、神経ブロック注射の効果はよければ数ヶ月も続くようです。
つまり麻酔薬の効果だけではないということです。
一時的に痛みの伝達がブロックされることで、身体に何らかのプラス変化が起こるのです。
② QOL(クオリティーオブライフ)を高める
痛みが続けば何もやる気が起こりません。
だから痛みがなくなったその時間を大切に使いましょう。
ペインクリニックへ行って痛みから解放されたとしても、何もしないでぼーっとしていてはいけません。
山積みになった仕事をやってしまう。
先送りになっていた約束を実行する。
仲間たちとの楽しい時間を過ごす。
その時間は、身体とココロのバランスを整える大切な役割を果たすのです。
バランスの整った状態では、「痛み」という警告反応は必要ありません。
結果的に痛みから解放されるのです。
③ ペインクリニックのメリットを感じるために
強く痛みを感じている時、身体のさまざまな機能も低下してしまいます。
痛みがなくなったその間に、身体自身も乱れた部分を正常化していきます。
神経ブロック注射の麻酔薬の効果がなくなった時、すでに身体が正常化されていれば痛みが復活することはありません。
ペインクリニックでの治療は、一時的に痛みをとりのぞくということに特化していますが、その結果、そこからずっと痛みから解放されるというメリットも潜んでいるのです。
このメリットを生かすためには、意識的に自ら改善しようという、前向きな気持ちも必要です。
ブロック注射によって痛みがとりのぞかれたその一時的な時間を有効に活用できず、痛みの再発を常に不安に感じている人にとっては、このメリットを感じることは難しいでしょう。
2)ペインクリニックのデメリット
① 一般的に言われているデメリット
神経ブロック注射は神経の近くに注射針を刺すわけですから、絶対に安全ということはなく、神経や血管の損傷によって麻痺やしびれ、あるいは痛みなどが生じるというケースもあるようです。
数ミリ単位の位置調整も必要になることから、医師の技術力が問われる治療といえそうです。
② 実際に身体に起こっていると考えられるデメリット
そもそも痛みは身体からの警告反応です。
まずブロック注射は、その警告反応である痛みを消しているということを理解しなければいけません。つまり警告を無視して逆らっているわけです。
例えば腰を動かすことで強い痛みがある場合、それは現状の身体では腰を動かさないでという警告反応だということです。そこで神経ブロックをして痛みがなくなり、身体の改善がなされる前に、腰を無理に動かしてしまうことで状態が悪化してしまうこともあります。
つまりメリットを生かしきれない人にとって、ペインクリニックでの治療はデメリットになる可能性が高くなってしまうということです。
でも心配いりません。ペインクリニックのメリットを簡単に生かす方法があります。
3 ペインクリニックでのメリットを生かす方法
1) まず「痛み」がある状態を理解しよう
警告としての「痛み」が発現!
でも、何の警告だと思いますか?
そう身体の使い方を間違えているのです。
痛みとは、身体の使い方に無理があったり、身体を効率良く使えていなかったり、結果的に身体のバランスが乱れているときに身体が発する警告なんです。
この状態になると、身体の中では自律神経の主に交感神経が過度に働き出します。
身体を立て直そうとしたり、必死になって支えようとしたりするからです。
しかし、その状態を一般的にも、また医療の中でもよく思われていません。
痛みや不快感、そして実際に病気と思われるような症状も出てしまうからです。
だから麻酔などで神経にアプローチして、一時的に神経の伝達を止めるのです。
そしてその痛みのない貴重な時間を大切に使う必要があります。
2) いったい何をすればいいのか?
それは、身体に注意警告を出されないようなカラダにすればいいのです。
効率良く身体を使い、意識的に身体のバランスを整えればいいのです。
さまざまな原因で心や身体のバランスが乱れたために自律神経が必要以上に働かなければならない状態になりますが、根本的な不調の原因は自律神経ではなく身体のバランスの異常です。
身体のバランスが整えば、自律神経が働きすぎることはありません。
実際に自律神経整えることは大変難しいことです。
しかし、身体に対してムラをなくし、効率良く支えるという身体に対するアプローチを続けることでバランスは整い、結果的に自律神経も整い、確実に痛みや症状は改善します。
さらに続けることで、その痛み自体も無くなります。
実際の身体へのアプローチはこの記事*を参考にしてください。
5 ペインクリニックに行く前に
本来、アプローチするべきところは自律神経ではなく、この自律神経が働きすぎないような身体作りをすることなのです。
痛みに悩み、最終的な選択肢がペインクリニックしかないというときにも、とにかくまず、自分自身で身体のバランスを整えるということをやってみてください。
大切なことは、自分自身で改善させるんだという意識。
なぜって、痛みは自分への自分自身からの警告なのですから。
まとめ
痛みは主観的な感覚で、自分にしかわからない、人にはわかってもらえない辛い症状です。
その痛みをわかってもらおうと訴えれば訴えるほど痛みが増してしまうという厄介な感覚でもあります。その痛みをとりのぞくための方法が注射を打つこと…。喜んで!とはいきません。
ここだけの話ですが、神経ブロックに使う注射の針は歯科医院で使っている注射の針の3倍ぐらい太い針です。痛そう。
ペインクリニックに行く前に、ちょっと身体のバランス整えてみませんか?
それ以上、痛い思いをしなくて済むかもしれませんよ。
(出典 疼痛.jp https://toutsu.jp/cure/burokku.html)